【004】忘れられた考え方「有機概念図をご存じですか」

May 18, 2018 | Author: Anonymous | Category: N/A
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忘れられた考え方 「有機概念図をご存じですか」

2012.02.29 [ 企画・編集(再) :久津間信明 ] [ 文責:城西大学薬学部 小林大介 ]

004

「薬物の構造式は学生時代にさんざん覚えさせられたにもかかわらず、医療の現場で役に立ったためしがない」 ことを、以前から思っていました。ま た、副作用を予測することが今後重要であるにもかかわらず、良い方法がないことも憂慮すべき問題です。薬物の作用は、それが主作用であれ副作 用であれ、その立体構造と電気的性質で決まるため、構造式と 立体構造や電気的性質 との関係、そして、それらと作用との関係が明らかになれば、 構造式から薬効や副作用を推定できるはずです。 しかし、現行の研究は、細胞レベル・分子レベルでのミクロレベルの作用機構解明がほとんどで、 疫学のような、マクロな立場からの洞察が少ないことも問題で、まだまだ体系的な予測に至るには時間がかかりそうです。 ところで数年前、イギリスのある論文誌を読んでいるとき、 「有機概念図」に出会いました。 この論文は有機概念図の考え方を利用して、薬物の生体 膜透過性促進物質を分類する研究でしたが、その独創性や応用性に驚かされたました。そして、もっと驚かされたのは、有機概念図は元来、日本人 研究者の考えによるものであったことでした。 このとき、有機概念図の成書がなかなか入手できず、知人のつてを頼って製薬会社の蔵書をコピーさ せてもらったのですが、その内容は、有機化学(構造式) と薬物療法(作用・副作用)を結びつけるのに充分過ぎる程、示唆に富むものでした。 有機概念図は、熊本大学薬学部長、第一薬科大学学長を歴任した藤田穆(フジタアツシ)先生創案によるもので、有機物質をその構造式から有機性 値と無機性値の二つの尺度で特徴付け、 グラフ上に打点することで薬物物性の予測や分類を行うものです。有機性値および無機性値の計算は比較 的簡単で、有機性値は炭素数に20をかけたものと、置換基に割り当てられた有機性値を合算したもの、また、無機性値は別に用意された無機性基 表を用いて、置換基ごとの無機性値を合算したものになります。下記(表A)に代表的な有機性値と無機性値を示しました。例えばアスピリンですと、 炭素が9個で有機性値は180、無機性値はカルボキシル基(150)+エステル(60)+芳香環(15)で225になります。 このような計算を多くの物質で行 いグラフ上にプロットすると、下記(図B)のような種々限界線が得られます。図Bには全ての限界線を示してはいませんが、概念図上の位置から、物 性の予測が可能であることを理解していただけると思います。図B中の白丸と黒丸はワーファリン(380/317) とフェニルブタゾン(380/310)です。両 者は構造式をながめただけでは、類似性を予測することは出来ませんが、有機概念図上では極めて近傍に位置するため、物性が類似していると推 定されます。アルブミン蛋白上の結合サイトの競合に基づく薬物相互作用はご存知の通りです。以前、有機概念図上の距離と薬物相互作用の報告さ れる確率との関係を調べたところ、距離が近くなるとその確率が大きく上昇することが分かりました。また、重大な副作用を起こす薬物を副作用ごと に打点すると、一部の副作用(TENなどの薬疹、横紋筋融解症、急性腎不全、など)では、特徴的な点の集合になることが分かっています。有機概念図 は構造と物性を結びつける経験則としてかつて利用されていたものですが、機器分析の発達に伴い徐々に忘れられていきました。 しかし、副作用や 相互作用の予測という新たな観点から、再びその応用が期待されます。

[ 表A ] 主要な有機性値と無基性値 (有機性値/無基性値)

( 70 / 0 )

( 20 / 0 )

( 100 / 0 )

(5/5)

( 40 / 10 )

芳香環



二重結合

三重結合

( 15 / 0 )

( 10 / 0 )

(2/0)

(3/0)



NO2



OH

( 150 / 0 )

( 70 / 70 )

I



Br



CI



F











( 20 / 220 )



| N

OSO3H

OH





O

( 60 / 0 )

O ‖ C



( 65 / 0 )

O





O ‖ C





O ‖ C

( 60 / 10 )

( 80 / 10 )

※有機性値と無基性値は置換基に起因する沸点の上昇に対応しています。

[ 図B ] 有機概念図 500 溶融限界線 分画線 400 結晶限界線 ワーファリン 無機性

フェニルブタゾン

300

200 発揮限界線 液体限界線 100 匂限界線 気体限界線 0

0

100

200

300

400

500

600

700

800

有機性

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